保育士不足の原因について~国と自治体の配置基準の違いを知ろう~

保育業界では、長年にわたって保育士不足の問題を抱えています。

ですが、この保育士不足の原因や、それを引き起こしている要因に
ついては意外と知られていないかもしれません。

今回は、保育士不足の原因と、それに大きく関わっている「配置基準」
について説明します。

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待機児童ゼロを目指す厚生労働省の方針

「待機児童数ゼロ」は、保育の業界の最大の課題です。

子どもを預けることができない家庭を少しでも減らすため、厚生労働省も
さまざまな取み組みを行い、保育施設や保育士の確保を目指しています。

その中で、厚生労働省が設定している「最低基準」があります。

最低基準とは

厚生労働省では、保育園を設立するにあたり、これだけの条件を満たしなさいと
いう最低基準を儲けています。

施設面積

設備

定員

保育士の数

こうしたいくつかの基準をクリアした保育園を「認可保育園」といい、
国に認められた保育園として税制が優遇されたり、補助金、助成金の
交付を受けることができます。

一方、この基準を満たせない、もしくは満たしていてもあえて認可申請を
しない保育園も多数あります。これらの保育園を認可外保育園(無認可
保育園)と言います。

「認可外保育園=安全でない」というわけではない

一見、認可外保育園と言うと、まるで違法な運営をしていたり、安全基準
を満たしていない保育園のように聞こえてしまいますが、決してそうでは
なく、保育園側が認可を受けたいか受けたくないかの違いであるだけで、
どちらも正規の保育園として運営しています。

認可を受けることで、国からのサポートを受けられるので、認可を受けた
ほうが優遇されますが、敷地面積が確保できないなど、条件をクリア
できない場所に設置された保育園や、認可を受けることでできる保育業務
に制限がかかってしまうため、あえて認可を受けない保育園もあるのです。

いずれの保育園も、正しい運営がなされているかどうかは、各自治体が
厚生労働省の定める指針に基づき、定期調査を行っています。

厚生労働省が定める保育士配置の最低基準

厚生労働省が定める、保育園における保育士の人数の最低基準は以下の
通りです。

 児童の年齢計算式最低・最高
0歳児児童数×1/3児童3人に対して保育士1人
1・2歳児児童数×1/6児童6人に対して保育士1人
3歳児児童数×1/20児童20人に対して保育士1人
4・5歳児児童数×1/30児童30人に対して保育士1人
   

※数点第1位まで計算(小数点第2位は切り捨て)、小数点第1位を四捨五入

この数字だけを見るとピンとこないかもしれませんが、この最低基準と
ぴったりの条件の保育園がある過程すると以下のようになります。

0歳児3人、2歳児6人、3歳児20人、5歳児30人、総勢59人
園児がいる保育園に対して必要な保育士の最低数=4人

このように、この園児数に対して4人の保育士では、とうてい人手が
足りないことがわかります。

保育士さん1人の負担は非常に大きくなってしまい、休憩時間や食事
時間もまともに取れないような環境では、とても安全な保育環境を
保てる条件とは言えません。

そのため、ほとんどの保育園はこの最低基準よりも多い保育士さんを
確保して運営しているのが現実です。

もちろん、この最低基準で十分に運営できる保育園もあります。

例えば0歳児2人、2歳児2人、3歳児4人、5歳児9人、総勢17人
園児がいる保育園に対して必要な保育士の最低数も4人です。

この場合は十分に質の良い保育が可能ですので、必ずしも国の
最低基準がゆるいということではありません。

あくまで最低の人員数を定めているということになります。

なぜ国の最低基準は低めのか

ではなぜ、国の定める最低基準が低めのかと言うと、待機児童問題
が大きく関わっています。

子どもを預けられない家庭の強い要望を受けて、待機児童解消を
目指す国の方針を進めるためには、あまり高い基準にできない
現状があります。

しかし、現実的にはこの最低基準での保育園運営は難しいのです。

自治体による配置基準

国の定める最低基準とは別に、各都道府県の自治体ではそれぞれに配置基準
を設けています。

この自治体による配置基準は、より現実的な設定をされていることが多く、
ほとんどの場合、国の最低基準よりもかなり多い保育士数を設定しています。

そうしないと安全な保育環境を保つことができず、また保育士さんの
負担を緩和できないからです。

つまり、現在の保育の現場では、待機児童数を減らすために子供の
受け皿を増やしたい国の方針と、現実的に対応せざるを得ない自治体
がお互いに方向性を模索しているという状況と言えます。

近年の保育環境の改善について

近年の保育の現場では、より現実的な問題に対しての改善が進んで
います。

例えば各保育園では、より保育士さんが働きやすいように、無理な
園児の受け入れをせずに保育士の数を確保する努力をしたり、残業や
持ち帰り仕事などをできるだけ減らしたり、給与や待遇を見直したり
する保育園が増えています。

その理由を以下に説明します。

保育士離れを防ぐため

人員的に無理のある保育の現場では保育士さんが長く続かず、
慢性的に保育士不足となってしまうことが、長年の経験から
理解されてきたことがまず挙げられます。

保育士さんが定着しない現場は、常に人手不足に陥ってしまい、
さらに保育士さんに負担がかかるという悪循環になります。

そのため、ゆとりのある労働環境にシフトして、保育士さんの
安定的確保を目指す保育園が増えてきています。

保育士さんも働き方に対する意識が変わってきている

近年、育児をしながら保育士として働いたり、自分の時間と仕事の
時間をきっちり分けて働きたいと考える人が増えてきたことに
よって、保育園側も派遣やパートなどで時短勤務を受け入れるように
なってきました。

そうすることで、人手が必要な時間とそうでない時間をうまく
使って保育士さんの負担を軽減する工夫もされるようになってきて
います。

求人エージェントによる保育園評価

保育業界のみならず、派遣会社や看護師、介護士などの専門職にも
求人エージェントのサービスが浸透してきました。

例えば保育士専門の求人エージェントは、たくさんの保育園からの
求人情報を持っていると同時に、その保育園の内部事情も把握して
いて、仕事を探している保育士さんに情報を提供してくれます。

しかし、職場の雰囲気や待遇、人間関係までもが情報として提供
されてしまうため、労働環境を整備できていない保育園は、応募
をさけられてしまう傾向にあります。

つまり、環境のよい保育園には保育士さんからの応募が集まり、
環境の悪い保育園には応募が集まりにくくなっている現状が
あります。

おのずと保育園側も、労働環境を整備する必要性に迫られてきて
いるのです。

待機児童数と実際の保育の現場のギャップ

このように、国としての方針である待機児童数ゼロ達成への取り組みと、
実際の保育の現場のギャップはまだまだ大きいと言えます。

どんなに国が児童の受け皿を広げようとしても、現実的に難しいことを
強要されれば、保育士の数が減ることは必然です。

保育の質と保育士さんが働きやすい環境が整った上で、待機児童数も
減っていかなければ、問題は解決しないでしょう。

まとめ

今回は国と自治体の配置基準の違いについて説明しました。

結論としては、保育士の不足が待機児童数問題の最大のポイントで
あることは間違いありません。

極端に言えば、保育士が増えれば全ての問題が解決するわけです。

そのためにも、まずは保育士さんが楽しく生き生きと働ける職場
作りをして定着率を高め、給与や待遇面ももっと良くしていく
ことが大事だと言えます。

現在の保育の現場では、保育士さんの労働環境を改善する方法に
進んでいるのは非常にいいことだと思います。

それによって、また保育の現場に戻ってきてくれる保育士さんや
新たに保育士を目指す人が増えてくれるといいですね。

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